琴平を訪れた冬の日、金刀比羅宮の近くにある春日神社に立ち寄りました。観光客で賑わう場所から少し離れただけで、空気がすっと変わるのを感じます。
境内に足を踏み入れた瞬間、音が抑えられ、時間の流れが緩やかになるような感覚がありました。冬特有の澄んだ空気が、余計な思考や感情を静かに落ち着かせてくれるようでした。

冬の神社には、華やかさや動きはほとんどありません。その分、外からの刺激が少なく、自分と向き合うための余白が生まれているように感じました。
この場所では、何かを決める必要も、答えを出す必要もなく、ただ「一度立ち止まる」ことが自然に許されているようでした。
人との関係や外側の状況から少し距離を取り、自分の立ち位置を静かに見直す。そんな時間が、無理なく流れていきました。

ここで強く願いごとを思い浮かべたわけではありません。むしろ、気持ちが自然と静まり、整理されていく感覚の方が強く残っています。
冬の冷たい空気の中で、感情の輪郭がはっきりし、必要以上に背負っていたものを下ろせたように感じました。
「今は無理に動かなくてもいい」「距離を取ることも、ひとつの選択」そんな思いが、言葉にならないまま心に残りました。

この体験は、特別な出来事が起きたというものではありません。けれど、気持ちが落ち着いたこと、自分を客観的に見られたこと、心の中が整理されたこと。そうした変化が、確かにありました。
春日神社は、前へ進むために背中を押す場所というより、一度立ち止まり、整えてから次へ向かうための場所。そんな印象を受けます。
冬は、外へ向かう季節ではなく、内側へ向かう季節。だからこそ、この神社の静けさが深く響いたのだと思います。
琴平を訪れる際には、賑やかな場所だけでなく、こうした静かな神社にも足を向けてみると、旅の印象がまた違ったものになるかもしれません。


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